ネックの元起きが起こったり、指板がうねったり捻じれたりした場合は、なかなか素人が手を出せずにリペアショップにお願いすることになります。
セットネックのギターではネックを外すこと自体が難しい。私がいつもお世話になっている工房ではアコギの場合、15 Fret の指板に小さな穴を2つ開けて、そこに蒸気を吹き込む。通常昔のギターは膠(にかわ)でネックとボディを接着しているので、熱によって膠が溶けて木槌でコンコンを叩いてネックを外すと。
しかる後、ネックの仕込み角を調整して再接着。私の D-42 1999 などは紙のシムが嚙まされていました。これじゃあナット側からのネックの振動が十分にボディに伝わらない。ネック材であるマホガニーの薄い板をテーパリングして適正な角度を得る。
指板は捻じれやうねりがあれば平らに削る。もちろんフレットはすべて抜くわけです。指板の両端のアールを適正に(奏者の好みによる)丸めて、フレットを打ち直す。この時にフレットの両端の処理をするわけです。きれいに丸まっていないとスライド奏法をした時に引っかかって下手をすると指が切れます。
さらに打ち込むフレットにもよりますが、頂部が台形になっているものはいけません。押弦した時に一点で接触しなければ正しいイントネーションが得られないし、音自体も悪い。丸く磨き上げる作業をクラウニングといいますが、これは手間暇がかかります。
このような作業は素人が手を出せるものではありませんが、トラスロッドを回すくらいなら誰でもできます。オークションの商品説明で、トラスロッドは回したことがありませんとか、弄らないでほしいという要望があって回していませんなどの記述をよく見ますが、んーんもんはどんどん回せばよろしい。
トラスロッドは回すためにあるのだから、それを回して不都合が起こるようなギターはギターとは言えません。
というわけで、画像にあるレンチを購入しました。1本は Gibson 用の 7.94 mm (5/16")のレンチで、もう1本は Martin 用の約 5 mm のレンチです。前者はメスだし、後者はオスですね。Martin のトラスロッドはネックエンドから回すようになっているので、普通のレンチでは届きません。
これらを使って Gibson と Martin のギター群のネック調整を行いました。ほぼ意図する弦高にすることができました。真っ直ぐでも弦高が高い場合はサドルを削るしか手はありません。私もだいぶ削りましたが、牛骨だと結構イヤーな匂いが出ます(笑)。Tusq なら大丈夫ですが、工房の社長は「やっぱ油浸した牛骨でしょう」と言います。12 fret で弦高を 1 mm 下げるにはサドルを 2 mm 削らなければならないわけで、そのための十分なサドル高が必要です。アコギの場合、ブリッジ付近の表板はどうしても多少は浮いてきますから、必然的に弦高は高くなる運命なのですね。
トラスロッドとサドルの調整でどうしても思うような弦高にならない場合は、ネックの仕込み角を変えねばならず、これは工房にお任せするしかない。参考になれば。